「耳をすませば」の世界?!
バイオリン工房「アトリエVERNICE」

2017年6月22日
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弱冠27歳という若い職人さんが一人で切り盛りする、オーダーメイドのバイオリン工房。
上福岡駅前交差点の近くに、びっくりする程おしゃれで高級感漂う素敵なバイオリン屋さんがある!と以前から気になって仕方がなかったので、バイオリンのバの字も分からない身ながら取材をさせていただきました。

店名の「VERNICE(ヴェルニーチェ)」とは、イタリア語で「ニス・塗料」という意味だそうです。
その名の通り、この工房のバイオリンはニスの美しさに徹底的にこだわっています。
1本のバイオリンを仕上げるのに、ニスを13~14回も丁寧に重ね塗りすることで、圧倒的に美しい仕上がりを誇ります。

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↑ニスと木目がとてもきれい

オーナーの池渕さんは、楽器職人らしい長く繊細な指を持った、とても誠実そうで、フットワークの軽いさわやかな男性です。
昨年まで5年間イタリアで修行し、満を持してこの工房を開いたそうです。
京都ご出身だそうで、ではなんでふじみ野に工房を??というのが不思議で仕方なかったのですが、もともと場所にこだわりはなく、都内の楽器店に卸すためある程度都心へのアクセスが良い場所が良かったこともあり、地縁のあったふじみ野に拠点を構えることになりました。
将来的には、できれば田舎でゆっくりと製作したいという希望をお持ちだそうです。

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↑店内は店舗と工房に分かれています。こちらは店舗部分。木のいい香りがします。

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↑製作途中のバイオリンも飾ってあります

バイオリン職人とは聞き慣れない職業ですが(少なくとも私は、宮崎駿監督のアニメ以外で一度も出会ったことがありません)、実際とても希少な職人さんたちで、日本では「関西弦楽器製作者協会」という組織に所属する40人程度が実質的にほぼ全員なんだそうです。
ちなみに他にも製作者協会はありますが、修理職人さんが多く所属していることが多く(こちらも貴重な職人さん)、製作と修理は職種が別物なんですって。

では、池渕さんは何故バイオリン職人を目指したのでしょう?
音楽の素養としては三歳からピアノを習っていましたが、バイオリンに触れたことはありませんでした。
それが十代の頃、近所でよくしてもらっていたおじいさんが亡くなられたとき、形見としてバイオリンをいただいたそうです。
弾いてみたらなぜかしっくりきたものの、すぐに壊れてしまい、修理する必要にせまられました。
そこで出会ったのがバイオリン職人という職業です。
もともと手先が器用でプラモデルを作ったりするのが大好きだった池渕さんは、そのまま職人を志すことになります。
今でもバイオリンは「弾けません」とのことですが(謙遜かとは思いますが…)、はじめから演奏家ではなく製作者になろうと思ったというのが意外に感じました。
「自分でもどうしてかは分からないけれど、作る側になろうと決めたんです」とのこと。導かれたものがあったのでしょうか。

バイオリン製作を学ぶ為、まずは日本の音楽院のバイオリン製作科に進みますが、ここは演奏家を育てるための学校なので製作はあまり学べなかったそうです。
そこで本格的に学ぶべく、イタリアのクレモナに留学し、バイオリン製作学校に入学します。
このクレモナという街は、かの名器ストラディバリウスの製作者、アントニオ・ストラディバリの拠点だった場所で、現在までバイオリン製作のメッカと言われています。
しかし池渕さん、せっかく入った学校にも籍を置くだけの状態で、実際には近くの工房に就職し、朝から晩まで入り浸りでバイオリンを製作していました。
学校では数学や英語などの普通の学科があることもあり、バイオリン製作だけに没頭できなかったから。とにかく作りたかった、というのが分かります。
この工房には日本人が池渕さんしかいない環境。留学1年目はイタリア語も満足にしゃべれない状態だったそうですが、それでも工房に飛び込める勇気と行動力がすごいです!!
留学中の5年間で学校や工房で携わった楽器の数は、なんと100本以上だそうです。
現在はすべての工程を一人で担っているため、1ヶ月に2本くらいのペースで製作しています。
この業界では分業が主流なので、一人でイチから作る職人は珍しいそうですよ。

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↑工房での作業

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↑ストラディバリウス(1715年製)の型を使用します。

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↑道具掛けのパネルもご自分で作りました。作業机や道具はほぼすべてイタリア製!

材料である木材はすべてイタリアで仕入れます。池渕さん自ら3カ月に一度はイタリアに行き、バイオリン専門の木材屋さん(そんなお店があるとは、さすが本場!)で仕入れます。
表板は赤モミ、裏板はカエデが一般的。木目の美しさでバイオリンの価値が変わるそうで、木材のチョイスは大変重要です。
アトリエ内に木材がたくさんあり、「これが最高級レベルです」と言って触らせてくださいましたが、金額を想像すると手が震えてすぐお返ししてしまいました…
余談ですが、中国製の安価なバイオリンを見せていただいたところ、なんと木目がペンで描き足してありました。なにもそこまで。
もちろん、中国製でも良いものは美しい木材を使ってしっかりと作ってありますよ!
ここ最近は中国製などの安価な既製品のクオリティの向上が目覚ましいそうです。

ところで気になるお値段ですが、なんとフルオーダーで100万円前後!
それだけの金額を出すのはプロの演奏家かと思いきや、顧客は意外にも音大生などアマチュアの方が多いんだそうです。
プロは100年、200年と経過した古い楽器を好むため、プロの使う楽器は数千万円クラスがザラみたいです。
もちろん既製品ではもっとお安いものもたくさんありますよね。
では、20万円の既製品と、100万円のオーダーメイドとの違いはなんでしょう?と聞いてみたところ、安いものを購入すると修理代のほうが高くつく、とか、長持ちしない、ということの他に、最大の違いは「弾き込む程に音が良くなっていく」ということにあるそうです。
バイオリンの材料である木は自然物ですから、ひとつとして同じものがありません。
職人は材木をひとつひとつ吟味し、その木のコンディションを最大限に引き出すことができます。
数百年の時の流れに耐えるのは手作りならでは。大切に使っていけば、300年から400年は持つそうです!
なんだか、普段の生活とは桁違いの世界です。
今から100年後には、池渕ブランドのバイオリンをプロの演奏家がこぞって使用しているかもしれませんね。

ちなみに、オーダーメイドなのでもちろん外見も好みにカスタマイズできますよ!
白木の状態から好きな色を選べますし、本体やペグに装飾を依頼することもできます。
実際、見せていただいた依頼物のなかには、某アニメのマークが入っているものもありました!
一生モノの大切な楽器ですから、自分の好きに装飾できたら愛着もひとしおでしょうね。

フルオーダー以外にも池渕さん製作のバイオリンを手に入れる方法として、都内近郊の楽器店に定期的に卸しているそうなので、興味のある方はぜひ問い合わせてみてくださいね。
公式サイトにも在庫一覧が載っています。こちらは40万円くらいから手に入るようです。
既製品の修理も受けているそうです。

池渕さんに、この先目指したい夢をお聞きしたところ、「イタリアで開かれる国際コンクールで賞をとりたい」と明確な目標をお持ちでした。
ふじみ野から世界一級のバイオリン職人が誕生する日が楽しみですね!

《トコフジ記者 文:いずもん 写真:あらた》

【店名】アトリエVERNICE(ヴェルニーチェ)
【公式サイト】https://www.ateliervernice.com/
【住所】〒356-0004 埼玉県ふじみ野市上福岡2-6-12
【電話】070-4416-1891
【営業時間】13:00〜20:00
【定休日】​火曜、水曜



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